風邪のとき解熱剤等を飲んで熱を下げようとします。
しかし、むやみに熱を下げればいいというわけでもなさそうです。
アメリカのM・クルーガー博士は、動物を使った次のような発熱の研究をしました。
サバクイグアナというトカゲに病原菌を注射して病気にしたところ、飼育場の温度の高いところへ移動して自らの体温を上げようとしたのです。
爬虫類は変温動物で、環境に合わせて体温を変えることができるからです。
このサバクイグアナに解熱剤をあたえて体温を下げたところ、半分が病死してしまいました。
ところが、解熱剤を与えなかったほうは、一匹死んだだけで、あとは助かったそうです。
魚でも同じような結果が得られましたし、ウサギ、子ブタ、子イヌ等の哺乳類でも解熱剤を与えたほうが死亡率は高かったのです。
つまり、薬を飲まずに野生の動物の病気が治るのは、発熱のお陰というわけです。
人間に、動物実験の結果がすべて当てはまるとは言えませんが、戦前にマラリヤや丹毒(たんどく)で熱が出て、その後病気が治ると、他の病気まで治ったという例がありました。
これらは、熱でバイ菌が死んだためでしょう。
最近では、ガン細胞が普通の細胞より熱に弱いことに注目して温熱療法も行うそうです。
エール大学のゴードン・ラフ氏は、体温が37度から39度に上がると、免疫反応の主役のT細胞数が20倍にも増え、体温が39度から40度に上がると、ウイルスと戦う物質インターフェロンの働きが三倍近くになったと報告してます。
そもそも発熱するのは、侵入した病原菌を白血球やリンパ球がやっつけようとするためです。
エネルギーが普段よりもたくさん要るので、代謝機能が活発になり体全体の熱が上がるために起こるものです。
多少の危険はあるけれども、敵をやっつけるための体の機能が一丸となって戦うわけです。
したがって、もともと心臓が弱い人や肺の働きの悪い人は別として、安易に解熱剤を飲むことは、かえって風邪を治りにくくするのかもしれません。
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